東京ではにょきにょきと高層ビルが建ちあがっている。
まるで雨上がりの森でキノコが生えるかのように。
どのビルもガラスのカーテンウォールが艶艶としていて、空の様相を映し込む。
ガラスの摩天楼は、20世紀の初頭にミースファンデルローエが描いた。
その有名なスケッチは、展覧会で刷られたポスターとしてうちにもある。
紙に鉛筆で書かれたスケッチは退色している。好きなビジュアルだ。
鉄は錆びる。
同じように、紙は汚れ、鉛筆の炭は退色する。
ミースは100年後を予言した。
鉄と硝子の精神を立ち上げた。
彼は果たしてその100年後を思い描いていただろうか。
思い描いていたと思う。
シカゴで彼のレイクショアドライブアパートメントに触れた。
美しかった。
彼の精神と手を感じた。
ベルリンの美術館でバウハウスのオリジナル家具に感じた手の感覚だった。
鋼鉄には加工した人間が宿る。
時間は造形物から人間を濾過してゆく。
いま東京に生えているキノコたちに、人間は宿っているだろうか。
